こんにちは!ADKが主催する若者マーケッター集団・ワカスタです!
この度ワカスタでは若者Web調査と題して若者の恋愛事情を探るアンケートを実施しました。
【調査対象】
年齢:15~24歳
性別:男女
エリア:関東
サンプル数:331名
「人生に恋愛は必要だと思いますか?」という質問に対し、若者の80%が「必要だ」と回答しました。
しかし、世間では「若者の恋愛離れ」が進行していると言われています。
事実、学校総選挙プロジェクトが16〜29歳を対象に行った調査によると、恋人がいる若者の割合は25.8%(※1)と低いことがわかっています。
「若者の恋愛離れ」と言うと、若者は上の世代より恋愛に興味が薄いと思われてしまいがちです。
この矛盾する「80%」と「25%」の背景にある要因は一体何なのか。
現役大学生のワカスタメンバーで、現代の若者の恋愛観について深掘りしてみました。
ここ数年、効率的な時間やコストの使い方を意味する言葉である「タイパ」「コスパ」が若者の中で注目されています。
三省堂の今年の流行語2022大賞に「タイパ」が選ばれたり、過半数の若者が日常の中でタイパやコスパを意識しているとの調査もあるようです。
そして今回私たちは、恋愛に対してもタイパやコスパを意識する若者が増えてきていることに気づきました。
-結婚前提の恋愛観が浸透!?-
ワカスタで実施した議論の中で見えてきたのは、恋愛を純粋に楽しむだけでなく、「結婚」という成果を前提に恋愛を考える若者が実は多いということです。
「恋愛するなら結婚が前提だと思う」「恋愛は必須ではなく選択肢の1つ」といった声が挙がっていました。
恋愛以外にもエンタメやタスクが溢れる多忙な日々の中では、精神的・物理的リソースを多く要する恋愛のタイパとコスパが重要になってきているのではないかというのが私たちの見立てです。
若者、特に女性の間で、こうした「結婚が前提の恋愛」の価値観が浸透してきているようです。
これは女性たちがタイパ意識の高まりによりあらゆる価値観において「未来志向化」していることが背景にあると考えられます。
今日、女性の社会進出がすすみ、女子学生のキャリア意識が向上しています。
入社した企業を結婚・出産を理由にやめると予想する女子学生は、2017年卒では38.5%*いたものの、2021年卒では22.0%(※2)に減っているとの調査があります。
ライフイベントに関わらずキャリアを大事にする女子学生が増えていることがわかります。
女性たちは、卒業後のキャリアを考えるタイミングでプライベートを含めたキャリア設計を見据え、結婚、出産などのライフイベントへの意識が高まります。
その結果、キャリアとプライベートのライフプランを明確にするために結婚が前提の恋愛を早期に求めるようになっているのではないでしょうか。
実際に私の友人の中には、「就活生になってから将来が現実化して結婚への焦りが出てきた」と結婚願望を持つきっかけになったエピソードを話してくれた方がいました。
-SNSが結婚意識を早期化-
また、SNSの「婚活アカウント」も女性たちの不安を煽り、結婚意識の早期化を押し進めているのではないかというのも、議論の中で見えてきた面白い発見でした。
「婚活アカウント」とは、30~40代の独身女性を中心に婚活の悩みを共有するSNSアカウントのことです。
例えば「はやく婚活しなきゃ」「高齢出産になる前に結婚したい」「婚活をしてもいい人がいない」など、結婚に焦っている様子を発信しているアカウントが多いのが特徴です。
私も含め周りの女子学生でこういった婚活アカウントの投稿を閲覧したことがある人は意外と多く、会話の話題に出ることもしばしばあります。
SNSの普及により、自身の10年後にあたる女性たちの婚活の嘆きが拡散され、それを見て不安に駆られ結婚に対する意識が高まっているのではないでしょうか。
さらに、「数十年先の孤独」を回避するための「結婚」と捉える若者もいます。「1人で死ぬのは怖いからパートナーがほしい」「老後を考えると結婚が必要」という意見が挙がっていました。このように、未来志向・逆算思考で成果を意識した「結婚が前提の恋愛」の価値観が広がっています。
人生にとって恋愛は必要なものと分かっていながらも、“今”は恋愛をする必要がないと思っている若者が増加しているようです。
必要とは分かっていながら、今を生きる若者にとって「恋愛」の優先度はそこまで高くないのです。では若者はどのようなことに時間を費やしているのでしょうか?
-「推し活」で毎日充実-
今「恋愛」を必要としていない人の理由の一つとして「推し活」があげられます。
言うまでもなく「推し活」とは自分が好きなアイドルや俳優、キャラクターや物事などを様々な形で応援することを意味しており、「推し活」にもミーハーレベルとされる人から、熱狂的なファンまで存在しており、「○○オタ」と界隈ごとにも分別されるほど、様々なオタクが存在しています。
SNSの普及により自分の好きな物事に出会うことができ、さらに同じ「推し」を持つ人と簡単に繋がれることが出来るようになったことから、「推し活」の幅が広がり、様々な楽しみ方が出来るようになったのです。
好きという意味では「恋愛」と似ているところもありますが、「推し活」と「恋愛」は根本的には意味が異なります。
「推し活」はこちら側が一方的に好意を抱いている関係であり、自分自身ではじめることができ、終わらせることもできます。
また推しに費やす時間とお金を自分で決めることができ、「推し活」は基本的にストレスフリーに楽しむことができるのが特徴です。
一方、現実の恋愛は互いの価値観の違いから我慢や行動の制限などが設けられたり、浮気の心配などといったリスクが伴います。
実際にワカスタの議論の中でも、「我慢や制限があり、その上不安定でリスクのある恋愛をするより、推し活をしている時の方が幸福度が高い」との声がありました。
もちろん現実での恋愛によって得られる幸せもありますが、リスクを背負ってまで恋愛をするよりは、自分主体で楽しむことができる「推し活」で幸せな満足感の高い日々を過ごすことできるのです。
だからこそ、「恋愛」よりも「推し活」の優先度が高くなり、将来を意識した現実的な恋愛は”今”必要ではないと思ってしまうのです。
-リアルを充足できるのは恋愛だけではない-
リア充という言葉は若者の間で既に死語とされていますが、「リア充」が流行した2010年前後は「恋人がいること」という意味が一番に考えられたのではないでしょうか?
しかし、現代では先程の「推し活」をはじめとした多様な娯楽の普及と多様な生き方、価値観を肯定する社会の風潮から、「恋愛」のみならず人生を充実させる物事が圧倒的に増加したと考えられます。
現代はスマートフォンの普及により、様々なコンテンツが身近に存在し、1人でも友達とでも楽しめる娯楽が数多く存在します。
恋人がいなくとも既に充実した毎日を送ることが出来ているのです。
その為、時間・お金・精神を今の日常から割いてまで恋愛をしようと思う若者が減っています。
ワカスタ内でも週7日間充実していて、恋愛する暇なんてないといった声もあり、「恋愛は暇人がするもの」といった考えもあげられました。
さらに社会人に向けてキャリアを考えた際、恋愛をする時間が無くなったり、さらには恋愛自体が仕事の妨げになったりする可能性もあるのです。
だからこそ将来性の無い恋愛を”今”無理にしたくないという若者が多く見受けられるのです。
以上のことから、恋愛は人生にとって必要であるとは分かっていながらも、リスクを負ってまで今”恋愛をする必要はないと考える若者は多いようです。
結婚はしたいと思いつつも、今目の前のことを楽しんでいるうちに恋愛に向き合うことを先延ばしにする。つまり”今”は恋愛のモラトリアムなのかも知れません。
-恋人への振る舞いを周りに知られるリスクが高すぎる-
ワカスタ内の議論で、付き合っている相手への思わぬ失言や、何気ない振る舞いが友達に拡散されることが心配だという声が男性メンバーを中心にありました。
Instagramの裏アカウントやBereal.、snapchatなど日常の様子を積極的に発信するSNSでは、同じコミュニティー内の友達に恋愛事情が伝わりやすくなっている現状があります。
「付き合っていても別れた後に気まずくなってしまった」、「付き合っていた間の彼氏としての振る舞いを広められて嫌だった」という体験談も挙げられました。
そのため、バイトやゼミ、サークルなど所属するコミュニティーの数は多くても、恋愛する場所にはできない若者が増えているようです。
-恋人の写真を投稿したら黒歴史になる!?-
ワカスタのワークショップでは、「SNSに恋人の写真を投稿すると別れた後に黒歴史になるから、投稿していない」という意見も出ました。
公開範囲を限定したり、後からその投稿自体を本人が消したりしても、投稿した時点で友達が保存し、拡散されるので、恋人の写真は一瞬で広まり、知らぬ間に友達の写真フォルダに残り続けてしまいます。
Bereal.では誰かがスクリーンショットを撮ると、投稿者に通知が来る仕様なのですが、画面録画ならセーフ!と私の所属するサークル内で話題になっていました。
身内の中で情報を共有したい気持ちが強いことの表れですよね。
特にInstagramは人となりや雰囲気を知る名刺的な役割を果たしているので、投稿してパートナーがいることを公言することで、関係性の深さを確かめあったり、浮気防止の対策になったりする側面を持っています。
そのため、恋人の写真を投稿したい気持ちと、将来デジタルタトゥーになりかねない投稿はしたくない気持ちの間で葛藤が生まれているようです。
-知りすぎてしまったワカモノたち-
恋人が出来づらくなった理由として、SNSで恋愛の情報に日々触れる中で、恋愛の知識や理想が高まっている一方、現実の恋愛が伴わず、実際の恋愛に移行できない人が多いからではないかという意見も挙がりました。
SNSではカップルYouTuberや、Instagram・Xで自身の恋愛体験を投稿するアカウント(惚気/婚活アカウントなど)が活発に更新されており、サブスクサービスでは恋愛リアリティーショーで恋愛の過程まで詳細に描かれています。
結果、身の回りだけでなく見ず知らずの他者の恋愛も詳しく知る機会が格段に増え、”恋愛偏差値”だけが上がってしまうのが現代の若者の現状です。
また、気になる相手の推しと自分を比べて容姿では叶わないと消極的になってしまうという声もありました。
私もSNSの投稿やフォローから推しがわかってしまい、自信を無くした経験があります。
以上のことから、SNSが作り上げた理想が独り歩きし、恋愛の期待値を上げすぎたり、恋愛のリスクばかり考えさせすぎたりしているといえます。
恋愛コンテンツが身の回りに溢れ、恋愛欲は常に刺激されている一方で、恋愛欲に留まり実際の恋愛活動に移行できない若者が増加していることがWEB調査の結果の背景にはあると考えられます。
-社会の多様化が恋愛の多様化を促進-
世間では “若者の恋愛離れ” が問題視されていますが、徐々に恋愛しやすい環境ができつつあると考えています。
その要因として、若者を取り巻く社会の変化が挙げられます。
SNSの発達やハラスメント問題など、社会は多様な価値観を受け入れるために様々な変革をしてきました。
その例として、プリキュアではついに男の子のキャラクターが登場するなど、社会において男女の役割という概念は無くなりつつあります。
ワカスタメンバーからも、「今はLGBTQの認知向上や女性の社会進出など社会が大きく変化していて、恋愛も多様化している。」という意見が挙がりました。
また、昔は恋人と一対一の関係を築くことが “恋愛” だというイメージがありました。
お見合いなど恋愛や結婚のために自分を犠牲にすることを仕方なく受け入れてきた側面もあると思います。
それに比べて、今の若者は恋人との関係構築までが多様化していて非常に複雑です。
「恋人のいない人生だって良い」「男性同士や女性同士でのお付き合い」「恋人を1人に決めず状況によって変える」など、社会の変化に応じて多様な恋愛のスタイルをオープンにできるような時代になりました。
-色んな出会い方や恋愛の形があって当たり前-
こうした恋愛スタイルの多様化とそれを当たり前に認める風潮が若者の背中を押すきっかけになっているように感じます。
その一例が「以前は言いづらかったような恋人との出会いのきっかけを周りに公言しやすくなった」ことです。私の周りでも「マッチングアプリを介して付き合った」、「ネットゲームの界隈で出会った」などを隠すことなく公言する人がいました。
少し前であれば、マッチングアプリやネット上で出会ったことに対して「それ、危なくない…?」と言われていた風潮があったと思います。それが近年、そうしたSNSから始まる出会いが一般化し始めたことで、そのような出会いに抵抗を感じない若者が増えてきたのではないでしょうか。
これも「色んな出会い方や恋愛の形があって当たり前」という価値観の多様化が、若者の恋愛観に影響を与えているのだと思います。
さて、若者の恋愛スタイルは社会の変化に影響を受けて多様化していることをこの章で述べました。
そうした多様化を受け入れる風潮に後押しされて、出会い方の面でも”周りに公言できる”という変化が若者の間で起きているのではと考えられます。
周りからの見られ方を気にせずに恋愛できる環境の醸成によって、若者の恋愛離れが解決されていくといいなと思います。
若者目線から分析した若者の恋愛のリアルな事情から、
▷「結婚するために恋愛する」という考えを持つ若者が多く、貴重な「今」を将来性のない恋愛に費やすことを避けている。
▷SNSの発達で恋愛に関する知識が簡単に手に入るようになったが、理想が独り歩きして実際に恋愛に踏み込めない。
▷恋愛の価値観の多様化が若者の間で受け入れられる環境の変化によって、若者の恋愛離れが解消される兆しが見え始めている。
ということをお分かりいただけたのではないでしょうか。
大人からすると、私たち若者の恋愛観は新しく珍しいものと感じられるのかもしれません。
しかし実際には昔と変わらない部分もあり、若者の間でも様々な恋愛観が存在していることがわかりました。私たち若者は様々な恋愛観を持つ人々と笑い合ったり泣いたりしながら社会の変化を迎えているのです。
「若者を研究し若者を動かすためのアイデアを開発する」をモットーに活動しているワカスタだからこそ、今後も若者の恋愛について考え発信していきたいものです。
【データ引用元】
※2:「女子学生の就職活動に関するアンケート調査(2021年3月)キャリタス就活2021学生モニター調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000539.000003965.html
Comments