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執筆者の写真酒井くるみ

ミックスもやし



便利ですよね、ミックスもやし。 大学からの帰り道、マイバスケットで待っているミックスもやし。 今日こそ、今日こそは自炊するんだ!そう意気込んで店内へ。 気が付いたらカゴにいれているミックスもやし。 だって、楽ちんなんだもん。

包丁使わなくていいし、なんかヘルシーだし。 ちょちょっと焼いてお皿に盛りつければなんか健康なご飯な気がしなくもない。

だって一食作ろうと思ったら、いっぱいお野菜買っちゃって。 結局、冷蔵庫のすみっこで新しい芽が誕生してる。 100円だよ?使い切り、コスパいいかも!

私たちワカモノは、人生においても、たくさんのミックスもやしをカゴに入れてきた。

中学生の頃、勉強ができなければ塾に行った。 そしたら、なんか成績あがった。 なんか、頭いい気がした。 高校生の頃、受験勉強がうまくいきそうになかったら、推薦があった。 そしたら、なんかいい大学入れた。なんか、勝った気がした。

大学生になって、就職という学生最後の関門が待ち構える。 キラキラした大学名を真っ黒なスーツに張り付けて、意気揚々と面接会場へ。 次々とぶつけられる質問に、次第にたくさんの肩書がぺりぺり剥がれ落ちていく。

頭が真っ白になりながら、そこで初めて、気づくのかもしれない。 自分自身が、綺麗にラベリングされた、栄養のないカスカスのもやしになっていたことに。

いつのまにか、カゴにまぎれこんでいるミックスもやし。 人参、キャベツ、玉ねぎ、 ひとつずつ明日の晩ごはんのことも考えて、 カゴにいれたほうが、健康的で安くて、本当の意味でコスパ良い。 塾も、推薦も、それら自体を否定しているわけではない。

利便性に優れた物が溢れ返っている今の社会。 本当の価値を見極めながらうまく付き合っていくことが、 現代に生きる私たちに求められている。

そんなこと言いながら、今日も右手にはミックスもやし。 だって、楽ちんなんだもん。 一度優しい道を歩み始めたら、なかなかもとには戻れない。

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