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江島綺有

可逆的友好関係



従来の友好関係は、 不可逆的なものの方が多いのではないだろうか。 心を許してるから相手のダメなところを許す。 信頼してるから相談する。 関係が先行。行動が後。 そしてその行動の積み重ねで関係は次のステップへ。

─いや、そんな悠長にやってらんないよ! 効率悪くない? そして私たちの友好関係は不可逆的に…。

今回はその一例。

私の大学の研究室は同期が5人。 そのチームで一つの研究テーマを扱う。 研究に際して集まったわけで、 一人ひとりの仲の良さはまちまち。 普段の生活や趣味も違う。 研究を機に友人になったとも言えるし、 でも普通の友人とは少し違うとは思う。

ただ一つ私達は、早朝から晩まで共に実験室に篭るという “疲れ”だけが一定のレベルで共通している。

だから、帰りの電車に乗ると お互いが寝ることを許す。 誰かが降車する時も寝たままで、 降りる側も起こさずに降りていく。 それがお互いの健康と研究のために 一番効率のいい関係だから。

…とはいえ、寝ても許されることで、 心理的な距離は近づいている気もする。

心を許すから寝るのではなく、 寝ても許されるから近づく… 逆でしょ?と思うだろうか。 逆も何もどっちでもいいのだ。 関係か、行動か。

私たちはこの効率的な人間関係で、 お互いにベストな距離感を より迅速に導いている。 もしかしたら恋愛も…?

今日も私はそんなことを考えながら、 寝ている同期を起こさないよう、そっと降車した。

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